公開日:2026年8月16日|最終更新:2026年8月19日
菊水矢倉とは、7七に桂を跳ねて8八に銀を置き、玉を8九まで下げた居飛車の守りの形(囲い)です。しゃがみ矢倉とも呼ばれ、玉がいちばん下の段にいるので、上から攻めても玉まで届くのに手数がかかります。
▶ 矢倉囲いの種類(7種)へ戻る ▶ 囲い一覧(全37種)へ戻る菊水矢倉の完成図は、8九の玉を8八の銀・7八の金・6七の金・7七の桂で囲った形です。
陣営:居飛車/系統:矢倉系/組む手数:13手
90〜100=全囲いでトップクラス/70〜89=強い/50〜69=ふつう/30〜49=弱め/0〜29=はっきりした弱点。
菊水矢倉は、初形から13手で組めます。金矢倉と同じ手数ですが、角を7七へ出して空いた8八へ銀を上げるので手順はまったく違います。
手数に数えたのは盤面図に写っている形を作るのに必要な手だけです。飛車を動かす手や、盤面図に写らない通り道をあける手は数えていません。相手の手は入れていません。実際の対局では、相手も同じだけ指します。
全13手の手順は次のとおりです。
菊水矢倉は、相居飛車(おたがいに飛車を左へ振らない将棋)で、相手が8筋から攻めてくるときに使う囲いです。
| 自分 | 相手 | 菊水矢倉 |
|---|---|---|
| 居飛車 | 居飛車(相居飛車) | 使う。相手が飛車の前の歩を伸ばして8筋から攻めてくるときに向きます。玉がいちばん下の段にいるので、上から攻めても玉まで届くのに手数がかかります。 |
| 居飛車 | 振り飛車(対抗形=片方だけが飛車を振る将棋) | 向かない。矢倉早囲いと並んで矢倉系でいちばん横に弱いので、振り飛車が相手のときは選びません。 |
| 振り飛車 | 居飛車 | 使わない。自分が飛車を左に振ると玉は右へ囲うので、本美濃などの美濃系になります。 |
| 振り飛車 | 振り飛車(相振り飛車) | そのままでは使わない。おたがいに飛車を振る相振り飛車では、左右を逆にした右矢倉が使われます。 |
桂を7七へ跳ねる前に攻められたときは、菊水矢倉をあきらめて金矢倉にします。
7七に桂を跳ねるには、7七を通る角を先に6八までどかす必要があります。間に合わないときは銀を7七へ上げて金矢倉(13手)にします。
玉がいちばん下の段にいるので、飛車を持たれるとその段に打たれてすぐ王手になります。駒を交換するときは、飛車を渡さない順を選びます。
7七の桂は後ろへ戻れません。7六の歩を交換されて7六に駒を打たれたとき、それを取れるのは6七の金だけです。6七の金を攻めに使ってしまうと桂頭を守る駒がなくなるので、この金は動かさずに置いておきます。
菊水矢倉が攻められるのは、桂頭と下段への打ちこみの2つです。
7七の桂の前の7六を桂頭といいます。赤い印の7五へ相手の歩を進められ、7六の歩と交換されると、桂頭が空きます。そこへ駒を打たれると6七の金で取るしかなく、金が6七を離れるので囲いがくずれます。桂は後ろへ戻れないので、桂で受け直すこともできません。
玉がいちばん下の段にいるので、赤い印のところへ飛車を打たれるとそのまま王手になります。6九には守っている駒が1枚もないので、打たれた飛車を取り返せません。同じ6九へ銀を打たれた場合も取り返せず、7八の金を動かして受けることになります。1マスあけてよこに並んだ金や飛車を、銀を打って同時にねらう手筋を割り打ちの銀といいます。菊水矢倉は八段目(下から2つ目の段)にいる金が7八の1枚だけで、もう1枚は6七にいるので、この形では割り打ちになりません。横からの攻めは金矢倉より弱いので、飛車を相手に渡さないことが大事です。
菊水矢倉は、ほかの矢倉と行き来できない独立した形です。
発展先・発展元はありません。菊水矢倉は、金矢倉とは別の駒組みで作る形です。金矢倉とは7七・8八・8九の3か所が違うので、1手や2手では行き来できません。
関連する囲い:同じ矢倉系に金矢倉(13手)・銀矢倉(15手)・片矢倉(10手)・総矢倉(15手)・矢倉早囲い(10手)・矢倉穴熊(15手)があります。
菊水矢倉は、矢倉戦法(玉を左に囲ってから右から攻める指し方)と相掛かり(おたがいに飛車の前の歩を伸ばし合う指し方)と組み合わせて使います。
どちらも相居飛車で、相手が飛車の前の歩を伸ばして8筋から攻めてくる形になります。
図は実戦の25手目の配置を、菊水矢倉側が手前になるよう反転したものです。
図は菊水矢倉に組む前の形です。銀はすでに8八にいて、7七には角、8九には桂、玉はまだ6九にいます。ここから角を6八へ引き、8九の桂を7七へ跳ね、玉を8九まで運ぶと菊水矢倉になります。動くのはこの3枚だけなので、途中まで組んでから相手の形を見て決められます。
図は実戦の38手目の配置を、菊水矢倉側が手前になるよう反転したものです。
玉8九・銀8八・金7八・桂7七・金6七がそろって菊水矢倉の完成です。金矢倉は玉8八・銀7七・桂8九なので、この3か所が入れかわった形になります。8七の歩は、8八の銀と7八の金の2枚で支えています。玉が金矢倉より1つ下の8九にいるので、同じ地点から玉に迫るとき、金矢倉より1マスぶん遠くなります。
図は実戦の44手目の配置を、菊水矢倉側が手前になるよう反転したものです。
相手は飛車を8一へ回し、9一の香車と合わせて9筋(端)に力をためようとしています。手前側も9六まで歩を伸ばして突き合っています。菊水矢倉は玉が8九にいるので、端をこわされると攻めが玉のすぐ横まで届きます。相手の飛車が下の段へ回ってきたら、端に利いている駒の数をおたがい先に数えます。この将棋は、このあと手前側が端攻めをはじき返して寄せ切り、相手が投了しました(手前側の勝ち)。
図は実戦の56手目の配置です。下側が菊水矢倉側(解説者)、上側が相手です。
菊水矢倉の玉は8九、いちばん下の段にいます。図では同じ9段目の赤い印の5マスが空いていて、相手が飛車を持てば、そのどこへ打っても8九の玉に王手がかかります。だからこの囲いでは、攻めるときに飛車を切って相手に渡す手をいったん止めて、渡さずに攻める方法をさがします。図の手前側も飛車は2九に置いたまま、4六の銀と3七の桂で攻めの形を作っています。
図は実戦の65手目の配置です。下側が菊水矢倉側(解説者)、上側が相手です。
3三の歩は、相手の3二の金に当たっています。取らせるためにわざと打つ歩を叩きの歩といいます。実戦では相手が2一の桂でこの歩を取り、桂が2一を離れました。ここまでに手前側は3五と5五で歩を突き捨てて、4五へ桂を跳ねる形を作ってあります。解説者は5五の突き捨てを「十字飛車を食らいにくくなり、4五の桂が跳ねたあと5四へ垂れ歩ができる」と説明しています。突き捨ては歩を1枚損しますが、あとで選べる攻め方が増えます。
図は実戦の70手目の配置です。下側が菊水矢倉側(解説者)、上側が相手です。
3四の歩は、相手の3三の桂に当たっています。相手の3筋の歩は突き捨て合いで3六まで出てしまい、玉のいる3筋には守りの歩が1枚も残っていません。玉と同じ筋の歩がなくなった側は、そこへ駒を打ちこまれると受けにくくなります。実戦では、このあと手前側が銀と桂を重ねて攻め、相手が投了しました(手前側の勝ち)。
菊水矢倉について多い質問を6問まとめました。
13手です。金矢倉と同じ手数ですが、駒の置き場所が3か所違うので、1手や2手では組みかえられません。
3か所違います。金矢倉は玉が8八・7七が銀・8九が桂、菊水矢倉は玉が8九・7七が桂・8八が銀になります。
桂頭(7七の桂の前)と、いちばん下の段です。7六の歩を交換されて駒を打たれると、6七の金で取るしかなく、金が6七を離れて囲いがくずれます。飛車を相手に渡すと、下の段に打たれてすぐ王手になります。
上からの攻めです。玉がいちばん下の段にいるので、上から攻めても玉まで届くのに手数がかかります。ただし8六の守りは8七の歩1枚で金矢倉より薄く、横の攻めも金矢倉より弱くなります。
同じ形を指します。玉を8九まで下げてしゃがんだように見えることからそう呼ばれます。
矢倉戦法と相掛かりです。どちらも相居飛車で、相手が飛車の前の歩を伸ばして攻めてくる形になります。