公開日:2026年8月16日|最終更新:2026年8月20日
矢倉穴熊(やぐらあなぐま)とは、金矢倉の駒組みのまま玉を9九の隅へ入れた相居飛車の守りの形(囲い)です。金矢倉より玉が縦の攻めから遠くなるので、攻め合いになったときに粘れます。
▶ 穴熊囲いの種類(6種)へ戻る ▶ 囲い一覧(全37種)へ戻る矢倉穴熊の完成図は、9九の玉を9八の香・7七の銀・7八の金・6七の金・6八の角で守った形です。
陣営:居飛車/系統:矢倉系/組む手数:15手
90〜100=全囲いでトップクラス/70〜89=強い/50〜69=ふつう/30〜49=弱め/0〜29=はっきりした弱点。
矢倉穴熊は、初形(駒を並べた最初の形)から15手で組めます。
手数に数えたのは盤面図に写っている形を作るのに必要な手だけです。盤面図に写らない通り道をあける手は数えていません。相手の手は入れていません。実際の対局では、相手も同じだけ指します。
全15手の手順は次のとおりです。カッコの中は棋譜(指し手の記録)の書き方で、上=前に動かす/寄=横に動かす/引=下に動かす/右=右側の駒を動かすを表します。
矢倉穴熊は、相居飛車(おたがい飛車を振らない将棋)で金矢倉に組んだあと、おたがいに仕掛けにくくなったときに使う囲いです。
| 自分 | 相手 | 矢倉穴熊 |
|---|---|---|
| 居飛車 | 居飛車(相居飛車) | 使う。この囲いが本来ねらっている組み合わせです。金矢倉に組んだあと、おたがいに仕掛けにくくなったときに玉を9九まで運びます。 |
| 居飛車 | 振り飛車(対抗形) | 使わない。対抗形では相手の飛車が横に回って攻めてくるので、玉のとなりの8八が空いている矢倉穴熊では受けきれません。8八を銀や金でふさぐ居飛車穴熊や銀冠穴熊を使います。 |
| 振り飛車 | 居飛車 | 使わない。自分が飛車を左に振ると玉は右へ囲うので、本美濃などの美濃系になります。 |
| 振り飛車 | 振り飛車(相振り飛車=おたがい飛車を振る将棋) | 使わない。相振り飛車では左右を逆にした右矢倉が使われます。このページの形(玉が9九)は向きが逆になります。 |
矢倉穴熊を最後まで組ませてもらえないときは、13手目で止めて金矢倉のまま戦います。
13手目までで玉8八・銀7七・金7八・金6七・角6八の形ができます。これは金矢倉(13手)そのものです。相手が先に攻めてきたら、玉を9九まで入れる2手を使わずにこの形で戦います。
玉を9九へ入れると、9七の歩を守るのは9八の香と8九の桂の2枚だけになります。対抗形の穴熊とちがって8八に駒がいないぶん1枚少ないので、相手が9筋に歩と香を足してくると受けが足りません。端の歩を伸ばされたら玉を8八で止めます。
完成図の7八の金は、ほかの駒に1枚も守られていません。相手に桂や歩で拠点(相手の駒が居すわる足場)を作られたら、8八へ金や銀を打って玉と金をつなげます。8八は9九の玉・7七の銀・7八の金の3枚が利いている(そこへ動ける)ので、打った駒が取られてもすぐ取り返せます。
矢倉穴熊が攻められるのは、端・8八の空きマス・7八の金の3つです。
赤い印は、相手の歩と香が来る場所です。9七の歩を守っているのは9八の香と8九の桂の2枚だけです。対抗形の穴熊とちがって8八に駒がいないので、端の守りは1枚うすくなります。
赤い印の8八は、玉のとなりの空きマスです。ここに金や銀を打たれるとすぐ王手になります。9九の玉・7七の銀・7八の金の3枚が利いているので取り返せますが、駒を渡すたびに相手はまた8八へ打ってきます。
赤い印の7八の金は、ほかの駒に1枚も守られていません。相手は歩と桂だけで拠点を作れるので、この金から取られます。金を1枚はがされると、8八の空きマスと合わせて一気にせまられます。
図は実戦の39手目の配置です。
黄色の5枚が実戦の囲いです。矢倉穴熊は玉のとなりの8八が空くのが弱点ですが、この実戦では7七の銀を8八へ下げてそこをふさぎました。銀を下げるぶん上からの攻めには薄くなるので、相手が上から来る形かどうかを見てから決めます。この局面までは駒の取り合いが一度も起きていません。
図は実戦の63手目の配置です。
黄色の8四の銀と8五の歩が相手の棒銀(銀を前に出して飛車の前を攻める形)です。この形では赤い印の9六へ歩を突きたくなりますが、突くと△9五歩・▲同歩・△同銀と来られて端が破れます(この4手が図の配置で全部指せることを確かめてあります)。黄色の9七の歩は突かずに置いたまま、反対側から攻めるのがこの実戦の方針でした。
図は実戦の最終図(145手目)の配置です。
黄色の9九の玉と、いちばん近い相手の駒である黄色の8六の銀は3マス離れています。この図では、相手が盤上の駒をどう動かしても、持ち駒(角・金・桂・歩)をどこへ打っても、王手になる手が1つもありません(全部の手を数えて確かめてあります)。王手をかけられないあいだ、相手はこちらの攻めを受けるしかありません。この実戦も矢倉穴熊側の勝ちになりました。
矢倉穴熊は金矢倉から玉を隅まで入れた形で、矢倉系のいちばん最後にたどりつく囲いです。
発展元:金矢倉(13手)から2手かけて、香を9八へ上げ、玉を9九へ入れた形が矢倉穴熊(15手)です。
関連する囲い:同じく玉を最下段まで下げた矢倉系の形が菊水矢倉(13手)です。金矢倉の6七を銀にした形が銀矢倉(15手)、金矢倉の右の銀も5七へ運んだ形が総矢倉(15手)です。対抗形で同じように9九へ潜る形は居飛車穴熊(12手)です。
矢倉穴熊は、矢倉戦法と組み合わせて使います。
相性の良い戦法:矢倉戦法
相居飛車の指し方です。金矢倉に組んだあと、おたがいに仕掛けにくくなったときに玉を9九まで運んで、粘り勝ちをねらいます。
矢倉穴熊でよく聞かれるのは、組む手数・弱点・ほかの囲いとのちがいの3つです。
金矢倉の駒組み(駒の並べ方)のまま、玉を9九の隅へ入れた相居飛車の囲いです。銀7七・金7八・金6七・角6八の形はそのままで、香を9八へ上げ、玉を8八から9九へ移します。
15手です。金矢倉の13手に、香を9八へ上げる手と玉を9九へ入れる手の2手を足した数です。相手の手と、飛車を動かす手は数えていません。
端(9筋)と、玉のとなりの8八が空いていることと、ほかの駒に守られていない7八の金の3つです。8八に金や銀を打たれるとすぐ王手になります。
8八に駒がいないからです。居飛車穴熊は8八に銀が入って玉のとなりをふさぎますが、矢倉穴熊は空いたままです。9七の歩を守る駒も1枚少なくなります。
相居飛車で金矢倉に組んだあと、おたがいに仕掛けにくくなったときです。相手が先に攻めてくる形なら、玉を8八で止めて金矢倉のまま戦います。
攻め合いになったときは矢倉穴熊、受けに回るときは金矢倉です。矢倉穴熊は玉が縦の攻めから遠いぶん粘れますが、上部と端の守りは金矢倉より弱くなります。
やぐらあなぐまと読みます。