松尾流穴熊

松尾流穴熊の組み方17手|弱点と急所を盤面図で解説

公開日:2026年8月16日|最終更新:2026年8月19日

松尾流穴熊(まつおりゅうあなぐま)とは、居飛車穴熊の右の銀を7九まで引きつけて、金2枚と銀2枚で玉をふさぐ守りの形(囲い)です。プロ棋士の松尾歩さんが多く指したことで広まりました。

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目次

松尾流穴熊(まつおりゅうあなぐま)の完成図と9項目の評価

松尾流穴熊の完成図は、9九の玉を9八の香・8八の銀・7九の銀・7八の金・6七の金でふさいだ形です。

陣営:居飛車/系統:穴熊系/組む手数:17手

9項目の評価基準(100点満点・5点きざみ)
  • 横の耐久力:横からの攻め(飛車)にどれだけ耐えるか
  • 斜めの耐久力:斜めのラインを使う攻め(角)にどれだけ耐えるか
  • 上部の耐久力:玉の頭(上)からの攻めにどれだけ耐えるか
  • 端の耐久力:端からの攻めにどれだけ耐えるか
  • 玉の広さ:玉の逃げ道がどれだけ多いか
  • 玉の遠さ:玉が戦いの場からどれだけ離れているか
  • 囲いやすさ:少ない手数で、迷わず組めるか
  • 陣形バランス:守りに駒を使いすぎず、攻めに回す駒が残るか
  • 進展性:そこから別の形へどれだけ発展できるか

90〜100=全囲いでトップクラス/70〜89=強い/50〜69=ふつう/30〜49=弱め/0〜29=はっきりした弱点。

松尾流穴熊の組み方(17手)

松尾流穴熊は、初形(駒を並べた最初の形)から17手で組めます。

手数に数えたのは盤面図に写っている形を作るのに必要な手だけです。盤面図に写らない通り道をあける手は数えていません。相手の手は入れていません。実際の対局では、相手も同じだけ指します。

初形
はじめの形
4手目
角を動かして玉の道をあけた
9手目
玉が9九の穴に入った
13手目
金2枚がついた
17手目
松尾流穴熊の完成

全17手の手順は次のとおりです。カッコの中は棋譜(指し手の記録)の書き方で、上=前に動かす/寄=横に動かす/引=下に動かす/右=右側の駒を動かすを表します。

  1. 歩を7六へ突きます(▲7六歩)
  2. 歩を6六へ突きます(▲6六歩)
  3. 歩を5六へ突きます(▲5六歩)
  4. 角を7七へ上がります(▲7七角)
  5. 玉を6八へ上がります(▲6八玉)
  6. 玉を7八へ寄ります(▲7八玉)
  7. 玉を8八へ寄ります(▲8八玉)
  8. 香を9八へ上がります(▲9八香)
  9. 玉を9九へ引きます(▲9九玉)
  10. 銀を8八へ上がります(▲8八銀)
  11. 金を7八へ上がります(▲7八金)
  12. 金を5八へ上がります(▲5八金)
  13. 金を6七へ上がります(▲6七金右)
  14. 銀を4八へ上がります(▲4八銀)
  15. 銀を5七へ上がります(▲5七銀)
  16. 銀を6八へ引きます(▲6八銀)
  17. 銀を7九へ引きます(▲7九銀右)

松尾流穴熊はどんなときに使う囲いか

松尾流穴熊は、相手が振り飛車で持久戦(おたがいすぐに攻めず、じっくり囲い合う将棋)を選び、17手ぶんの時間があるときに使う囲いです。

自分相手松尾流穴熊
居飛車振り飛車(対抗形)使う。この囲いが本来ねらっている組み合わせです。17手かかるので、相手が急戦(囲いを省いて早く攻める指し方)を選ばないと分かってから組みます。
居飛車居飛車(相居飛車)使わない。相手の攻めが玉の上から来るので、17手も囲っている時間がありません。上に強い金矢倉総矢倉を選びます。
振り飛車居飛車使わない。ふつう自分が飛車を左に振ると玉は右へ囲うので、振り飛車穴熊になります。
振り飛車振り飛車(相振り飛車)使わない。相振り飛車では相手も金銀を玉の上に集めてくるので、右の銀を7九まで下げる4手がむだになります。速く組める金無双を選びます。

松尾流穴熊を手順どおりに組ませてもらえないときの指し方

松尾流穴熊を最後まで組ませてもらえないときは、右の銀を5七で止めて金銀3枚の穴熊として戦います。

銀を動かす前に、玉と金を先に決める

右の銀は3九から4八・5七・6八と動いて7九へ入ります。この4手の間は右側に守りの駒がありません。10手目の▲8八銀と13手目の▲6七金右までを先に済ませ、相手が攻めてこないのを見てから銀を動かします。

銀を引く途中で攻められたら、5七で止める

銀が5七にいる形は、金銀3枚の穴熊です。7九が空いているぶん居飛車穴熊よりは薄いのですが、横からの攻めには十分強いので、無理に7九まで引かずにそこで戦います。

5八をねらわれたら、金を6七へ上げずに5八へ置いたままにする

完成図の5八は、玉のまわりの守りの駒がどれも利いていないマスです。相手が5筋から攻めてきそうなときは、13手目の▲6七金右を指しません。金が5八にいれば、そこは空きマスではなくなります。

松尾流穴熊はどこから攻められるか

松尾流穴熊が攻められるのは、端・玉の頭・玉の逃げ道のなさの3つです。

端攻め

赤い印は、相手の歩・香・桂が来る場所です。9七の歩を守っているのは9八の香・8八の銀・8九の桂の3枚です。金銀を4枚も左に寄せているのに、9筋そのものには金が1枚もありません。

玉の頭に足場を作られる

赤い印は、相手の歩が来る場所です。金銀4枚のうち8七に利いている(そこへ動ける)のは8八の銀と7八の金の2枚だけで、7九の銀と6七の金は届きません。相手は8筋の歩を8五・8六と伸ばして8七の歩にぶつけ、取り合って空いた8七へ持ち駒の歩を打ちます。この歩は8八の銀に当たります。

5八が空いている

赤い印の5八は、玉のまわりの守りの駒がどれも利いていないマスです。飛車が2八にいるうちは飛車の横の利きで守れますが、飛車が動くと守りがなくなります。金銀4枚を左に寄せたぶん、中央から右がうすくなります。

松尾流穴熊の発展元・発展先と関連する囲い

松尾流穴熊は、居飛車穴熊から銀をもう1枚引きつけた形です。

発展元:居飛車穴熊(12手)です。6筋と5筋の歩を突き、7九の金を6七へ動かし、右の銀を7九まで引くと松尾流穴熊になります。この形からは8手で、はじめから松尾流をねらえば17手です。

発展先:ありません。ビッグ4(21手)は6七に歩を置く形なので、6六まで歩を突いた松尾流穴熊からは組みかえられません。

関連する囲い:同じ金銀4枚でも、8八と7八に金、8七と7七に銀を並べた形がビッグ4(21手)です。8六に歩を伸ばして8七へ銀を上げてから潜ると銀冠穴熊(15手)になります。左右を逆にした振り飛車側の穴熊は振り飛車穴熊(10手)です。

松尾流穴熊と相性の良い戦法

松尾流穴熊は、同じ名前の囲いを持つ戦法「居飛車穴熊」といっしょに使います。

相性の良い戦法:居飛車穴熊

相手が振り飛車で持久戦を選んだときの指し方です。守りに金銀4枚を使うので、攻めは飛車と角と桂で組み立てます。

実戦で学ぶ松尾流穴熊

実戦で学ぶ松尾流穴熊①: 潜り終わったあと、玉のまわりの金銀が何枚かを数える

図は1つ目の対局(将棋放浪記「【プロが相手でも勝率8割の形】これが松尾流穴熊だ!」)の解説場面の配置を、松尾流穴熊側が手前になるよう反転したものです。

黄色の8八の銀・7九の銀・7八の金・6七の金の4枚が、9九の玉を囲んでいます。これが松尾流穴熊の形です。ふつうの居飛車穴熊は金2枚と銀1枚なので、攻めに使うはずの銀を1枚ぶん守りに回した形になります。9八には香もいるので、玉のとなりの3マス(9八・8八・8九)はすべて自分の駒でうまっています。この対局は松尾流穴熊側の勝ちですが、勝ち方は相手の持ち時間が切れた時間切れ勝ちです。

実戦で学ぶ松尾流穴熊②: 駒を渡して攻め合う前に、自分の玉のまわりに何枚残っているかを数える

図は同じ対局の126手目の配置を、松尾流穴熊側が手前になるよう反転したものです。

相手の持ち駒は飛車1枚・金1枚・銀1枚・香2枚・歩7枚、松尾流穴熊側の持ち駒は金1枚・銀1枚・桂1枚・香1枚です。それでも9九の玉のまわりには、黄色の8八の金・7八の金・7九の銀があります。①の図では玉のとなりの3マス(9八・8八・8九)がうまっていましたが、この図で駒があるのは8八だけで、9八と8九は空きマスです。しかも8八は①では銀で、そのあと金を埋め直した形です。黄色の6三の相手の玉のほうは、囲いから出てきています。黄色の6二の馬(角が相手の陣地で成った駒)は松尾流穴熊側の駒です。攻め合いに出るかどうかは、駒を渡しても自分の玉が詰まされない形かどうかを数えてから決めます。

実戦で学ぶ松尾流穴熊③: 相手の玉のとなり8マスに、その玉を守る駒が何枚あるかを数える

図は同じ対局の128手目の配置を、松尾流穴熊側が手前になるよう反転したものです。

127手目に相手の玉が黄色の6二へ動いて、②の図にあった馬を取りました。128手目に松尾流穴熊側が黄色の7四へ銀を出したのが図です。黄色の6二の相手の玉は、となりの8マス(7一・6一・5一・7二・5二・7三・6三・5三)がすべて空きマスで、その玉を守っている駒が1枚もありません。松尾流穴熊側の黄色の9九の玉は動いていません。黄色の8八の金・7八の金・7九の銀も残っています。この将棋はこのあと相手の持ち時間が切れて、松尾流穴熊側の時間切れ勝ちになりました。詰ませて勝ったのではありません。

実戦で学ぶ松尾流穴熊④: 潜ったあと、玉のとなりが自分の駒でうまっているかを確かめる

図は2つ目の対局(将棋放浪記「「松尾流穴熊」という戦法がエグい強さだった」)の40手目の配置を、松尾流穴熊側が手前になるよう反転したものです。

黄色の9九の玉はすみに入っていて、となりの3マス(黄色の9八の香・黄色の8八の銀・黄色の8九の桂)はすべて自分の駒です。その外側に7九の銀・7八の金・6七の金が続き、金銀4枚の松尾流穴熊になっています。相手は、5二の飛車(中飛車=まん中の5筋に飛車を振る戦法)と8二の玉という形です。穴熊に潜るかどうかは、相手がすぐ攻めてくる形かどうかを見てから決めます。この対局も松尾流穴熊側の勝ちです。

実戦で学ぶ松尾流穴熊⑤: 端に駒を並べられたら、あいだに何枚あるかを数える

図は同じ対局の48手目の配置を、松尾流穴熊側が手前になるよう反転したものです。

相手は黄色の9一の飛車と黄色の9二の香を並べて、こちらの9九の玉がいる端をねらう形(地下鉄飛車=飛車を下の段から端の筋へ回す形)を作りました。ただしこの筋には相手自身の9四の歩と、こちらの9六の歩・9八の香があり、赤い印の9三・9五・9七はまだ空きマスです。こちらは黄色の4六の角を出していて、5五・6四と空きマスが続き、その先の7三に相手の桂がいます。この桂が動けば、さらに先の8二にいる相手の玉までラインが通ります。端を全部受けようとせず、相手の攻めの主役になる駒を1枚決めて、その駒だけ働かせないようにするのが受け方です。

松尾流穴熊のよくある質問

松尾流穴熊でよく聞かれるのは、組む手数・弱点・ほかの囲いとのちがいの3つです。

松尾流穴熊とは何ですか?

居飛車穴熊の右の銀を7九まで引きつけて、金2枚と銀2枚で玉をふさいだ囲いです。プロ棋士の松尾歩さんが多く指したことで広まりました。

松尾流穴熊は何手で組めますか?

17手です。居飛車穴熊の12手とくらべると、歩を突く手が2手多く、右の銀を7九まで運ぶ手が4手増え、金を寄せる手が1手減ります。相手の手と、飛車を動かす手は数えていません。

松尾流穴熊の弱点はどこですか?

端(9筋)と、玉の頭と、5八のマスです。金銀4枚を左に寄せるので、5八には玉のまわりの守りの駒が1枚も利いていません。

居飛車穴熊とどこが違いますか?

右の銀が7九にいるかどうかです。居飛車穴熊は金2枚と銀1枚、松尾流穴熊は金2枚と銀2枚で玉を守ります。攻めに使える駒は1枚減ります。

銀はどの道を通って7九まで行きますか?

3九から4八・5七・6八と進み、6八から7九へ引きます。5七を通るときに右側の守りが留守になるので、玉と金を先に決めてから動かします。

松尾流穴熊とビッグ4はどちらが堅いですか?

横からの攻めにはビッグ4のほうが強く、組む手数は松尾流穴熊のほうが4手短くて済みます。ビッグ4は端にも強い代わりに21手かかります。

松尾流穴熊は何と読みますか?

まつおりゅうあなぐまと読みます。

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