公開日:2026年8月16日|最終更新:2026年8月19日
嬉野流とは、守りに使う左の銀を斜めに前へ出して攻める、先手の奇襲戦法です。初手に銀を6八へ上げ、3手目に角を7九へ引くのが目印です。定跡11手、斜め棒銀の狙い、玉の構え方、飛車交換を強要してくる受けへの備えを盤面図でまとめました。
嬉野流とは、初手に左の銀を6八へ上げ、3手目に角を7九へ引く先手の奇襲戦法です。
嬉野流の代表局面(先手の駒だけ)。角が7九、銀が4六まで斜めに出た形です。
ふつう左の銀は玉の守りに使います。嬉野流はその銀を斜めに前へ出して、攻めの駒に変えます。
角を7九へ引くのは、銀が上がって空いた道を使うためです。この角は銀が通る5七・4六の斜めの線に乗り、前へ出た銀を後ろから支えます。
作ったのはアマチュアの嬉野宏明です。2015年に元奨励会三段の天野貴元が研究を足して本にまとめ、広く知られるようになりました。
定跡手数:11手(当サイトの定跡データに入っている先手の手の数。相手の応手は数えていません)。
嬉野流は、意外性85が筋違い角と並んで24戦法で2番目に高く、仕掛けの速さ80も上位の戦法です。
意外性85が高いのは、初手から相手の知っている形にならないからです。相手は自分の定跡を1手目から使えません。
玉を囲わないぶん、攻めの駒を早く前へ出せます。破壊力70は真ん中あたりです。
対急戦耐性60が真ん中あたりなのは、玉が薄いかわりに、金と歩で飛車先を受ける形が用意されているからです。奇襲としては長い将棋にも耐えます。
覚えやすさ55と持久力55はやや低めです。手順自体は短いのですが、相手の出方ごとに銀の進め方を変える判断が要ります。
嬉野流は、左の銀を6八へ上げ、角を7九へ引いてから、銀を5七・4六と斜めに進めます。
初手に銀を6八へ上げたところ(▲6八銀)。歩を突かない出だしが嬉野流の目印です。
角を7九へ引いたところ(▲7九角)。銀が上がって空いた道に角を回します。
右の銀を4八に上げ、金を7八に上げて飛車先を受けます(▲4八銀・▲7八金)。飛車先の歩を2五まで伸ばし、玉を6九へ寄せます(▲2六歩・▲2五歩・▲6九玉)。
歩を5六と3六に突いて銀の道を作ります(▲5六歩・▲3六歩)。
左の銀を5七へ上げたところ(▲5七銀左)。右の銀も5七へ行けるので「左」を付けて区別します。
銀を4六まで出した形(▲4六銀)。次は歩を3五に突いて、銀の進む道を開けます(▲3五歩)。
嬉野流の狙いは、守りの銀を斜めに繰り出して、相手の2四を攻めることです。
銀は6八から5七、4六と進みます。まっすぐ進む棒銀とちがい、斜めに進むので「斜め棒銀」と呼ばれます。
2四で銀を交換できれば成功です。角も交換できる形になれば、こちらが指しやすくなります。
右の銀も4八から前へ出せば、銀が2枚並ぶ形になります。中央が厚くなり、簡単には崩れません。
相手が振り飛車のときは、鳥刺しという古くからある戦法と同じ形になることがあります。
嬉野流が対策されたときは、打ち込まれる場所を減らす、銀を6六へ回す、玉を8八まで運ぶ、の3つで戦います。
これが最も有力な対策です。玉が薄いので、飛車を交換されると自陣に打ち込まれます。
飛車を交換しない形を選ぶか、交換されても打ち込まれる場所を減らす駒組みにします。金を7八に上げてある形は、そのための備えです。
銀を4六へ出さず、5七から6六・6五へ回して相手の銀を止めます(▲6六銀・▲6五銀)。これが嬉野流の棒銀対策の基本です。
8筋の歩を交換されたあとなら、歩を8八に低く打って受けられます(▲8八歩)。角が8八からいなくなっているので、この受けが使えます。
新嬉野流という発展形なら、玉を8八まで運んで堅く囲えます。速攻が通じないと分かったら、この形に切りかえます。
囲ってしまえば、あとは銀2枚の厚みを活かした押し合いになります。
嬉野流は、ほとんど囲わずに戦う戦法です。
玉を動かさないまま戦うことも多く、動かしても6九に寄る程度です。攻めの手数を1手でも増やすためです。
どちらも堅さより手数の少なさを取る囲いです。嬉野流の考え方と合います。
嬉野流を受けるときは、角を4四に出して飛車の交換を迫るのが最も有力です(△4四角)。
相手の玉は囲われていません。飛車を交換すれば、打ち込む場所がたくさんできます。
棋士の本間博が紹介した、飛車を8六に置いたままにする受け方もあります。
もう1つのコツは、初手の6八銀を見た時点で相居飛車の準備をやめることです。相手は定跡どおりに来ないので、自分だけ定跡どおりに指すとかみ合いません。
斜めに出てくる銀は、こちらも銀か角で受けます。銀を4六から3五へ出させない形を作れば、攻めは止まります。
図は実戦の73手目の配置です。下側が嬉野流側(動画の解説者)、上側が相手です。
4四の馬(黄色。馬は成った角のことです)から、5三・6二・7一(赤い印)と空きマスがななめ一直線に3つ並んでいます。いちばん先の7一は、7二の相手の玉(黄色)のとなりです。相手の玉のとなり8マスには、金も銀も1枚もいません(いるのは8二の飛車・7三の桂・6三の歩の3枚だけ)。終盤に入ったら、自分の大駒のラインが相手の玉のとなりまで届いているかを数えます。
図は実戦の74手目(相手が2三へ歩を打った直後)の配置です。下側が嬉野流側です。
相手は2三へ歩を打ちました(黄色)。この歩は3二の金と2二の銀の2枚に守られているので、2六の飛車(黄色)で取りに行っても取り返されます。前へ行きにくくなったら、横を数えます。6段目は3六・4六(赤い印)が空きマスで、その先の5六には相手の歩(黄色)があり、飛車で取れます。
図は実戦の最終局面(75手目・飛車を2六から5六へ回ったところ)の配置です。下側が嬉野流側です。
5六へ回った飛車(黄色)は、5筋の5五から5一まで縦に利いています。そのうち赤い印の5三・5二は、相手の玉に近いマスです。4四の馬(黄色)は5三・6二・7一(赤い印)まで斜めに利いていて、6二と7一は7二の相手の玉(黄色)のとなりです。飛車と馬の2枚が同じ場所を向いた形です。この将棋は、この75手目までで先手=嬉野流側(図の下側・動画の解説者)の勝ちになりました。
ここから図はもう1本の動画(【完全版】嬉野流の勝ち方を教えます)に変わります。図はその実戦の41手目の配置です。下側が嬉野流側(動画の解説者)、上側が相手です。
3三の歩(黄色)に利いているのは、相手が2二の金と2一の桂の2枚、自分が4五の桂1枚(いずれも黄色)です。相手が金で取れば、こちらは桂で取り返して桂を相手陣の中に入れられます(そのあと2一の桂に取り返される形も残ります)。相手陣へ歩を打つ前に、その歩を取れる駒の数と、守っている駒の数を両方数えます。
図は実戦の42手目(相手が4四へ銀を打った直後)の配置です。下側が嬉野流側です。
相手は4四へ銀を打ちました(黄色)。この銀は4五の桂と3三の歩(黄色)の2枚に、同時に当たっています。4五の桂には自分の駒が1枚も利いていないので、放っておけば取られます。駒を打たれたら、まず自分のどの駒に当たっているかと、その駒に守りが何枚あるかを数えます。
図は実戦の43手目(3四へ銀を打ったところ)の配置です。下側が嬉野流側です。
3四へ打った銀(黄色)は、4三の歩と2三の歩(黄色)の2か所に同時に利いています。4三の歩には相手の守りが1枚も利いておらず、2三の歩を守っているのは2二の金1枚です。どちらへ出ても3段目なので、銀が成れます。さらにこの銀は、当てられていた4五の桂(黄色)を、図でななめ上から守っています。この将棋は先手=嬉野流側(図の下側・動画の解説者)の勝ちです。
アマチュアの嬉野宏明が作りました。2015年に元奨励会三段の天野貴元が独自の研究を足して本にまとめ、広く知られるようになりました。
初手に銀を6八へ上げる手と、3手目に角を7九へ引く手です(▲6八銀・▲7九角)。この2手が出たら嬉野流だと分かります。
左の銀を斜めに前へ出して攻めることです。6八の銀を5七、4六と斜めに進めます。ふつう左の銀は守りに使う駒なので玉は薄くなりますが、7九の角がその銀を後ろから支えます。
ほとんど囲いません。玉を動かさずに戦うことも多く、動かしても6九に寄る程度です。新嬉野流という発展形では、持久戦のときに玉を8八まで運んで堅く囲うこともできます。
角を4四に出して飛車の交換を迫る指し方が最も有力とされています(△4四角)。嬉野流は玉が薄いので、飛車を交換すると打ち込む場所がたくさんできます。
相手が振り飛車のときは、鳥刺しという古くからある戦法と同じ形になることがあります。相振り飛車(おたがいに飛車を左へ振る戦い)に持っていく指し方もあります。
指せます。後手でも同じ考え方で、右の銀にあたる駒を斜めに繰り出します。当サイトの定跡データは先手の手順で作っています。