公開日:2026年8月16日|最終更新:2026年8月19日
鬼殺しとは、左の桂を2回はねて相手の陣に迫る、先手の奇襲戦法です。玉は囲わず、短い手数で決めにいきます。定跡14手、名前の由来、金を6二に上がる受け、対策されたあとの切りかえ先を盤面図でまとめました。
鬼殺しとは、左の桂を8九から7七、6五へと2回はねて、一気に攻める先手の奇襲戦法です。
鬼殺しの代表局面(先手の駒だけ)。桂が6五、飛車が7八、歩が7五まで伸びています。8筋の歩を交換したあとなので、8七の歩はありません。
桂を8九から7七に上げ(▲7七桂)、6五にはねて相手の陣に迫ります(▲6五桂)。
6五の桂は5三と7三の2か所をにらみます。受け方を知らない相手は、この2か所を同時に守れません。
名前は、大正のころに売り出された「可章馬戦法」という本の売り文句から付いたとされています。「この戦法を使えば鬼も逃げ出す」という宣伝が元です。
玉は囲いません。一発で決めにいく戦法です。
定跡手数:14手(当サイトの定跡データに入っている先手の手の数。相手の応手は数えていません)。
鬼殺しは、意外性90が24戦法で1番高く、仕掛けの速さ95も早石田と並んで1番の戦法です。
速さと意外性が高いのは、玉を囲わずに桂だけで攻めかかるからです。相手が知らなければ、数手で勝負がつきます。
発展性30が低いのは、受け方が広く知られていて、通じる相手が限られるからです。
持久力20と汎用性15は24戦法で最下位です。攻めが切れると、囲っていない玉がそのまま的になります。
覚えやすさ80は上位です。桂を2回はねる骨組みだけなので、覚える手数が少なくて済みます。
鬼殺しは、歩を7五まで伸ばして飛車を7八に振り、桂を7七から6五へはねます。
いちばん短い形は、歩を7六に突いてすぐ桂を7七にはねる順です(▲7六歩・▲7七桂)。
ここでは、先に歩を7五へ伸ばして飛車を7八に振る順で見ていきます。歩が7五にあると、桂がはねたあとに7四へ歩を伸ばす攻めも使えます。
飛車を7八に振ったところ(▲7八飛)。7五の歩と合わせて、左側に力をためます。
桂を7七に上げたところ(▲7七桂)。次に6五へはねる形です。
この図で相手の歩はもう8五まで来ています。相手は歩を交換し、飛車を8六に進めてきます(△8六歩・▲同歩・△同飛)。
桂を6五にはねた鬼殺しの形(▲6五桂)。5三と7三の2か所をねらいます。
図は仕掛けまでの11手(先手と後手の通算)です。この先は相手の受け方によって分かれます。
鬼殺しの狙いは、6五の桂で5三と7三を同時にねらい、受けを間違えた相手を一気に攻めることです。
相手が5三を守れば7三へ、7三を守れば5三へ、桂が成り込みます。成り込んだ桂は金と同じ動きになり、相手の玉の近くに居座ります。
もう1つの狙いは角です。角を交換してから盤の真ん中に角を打つと、その角も7三をにらみます(▲2二角成・▲5五角)。桂と角で同じ場所を2枚でねらう形になります。
玉を囲っていないので、この攻めが止まると勝ち目が薄くなります。短い手数で決めるのが前提です。
鬼殺しが対策されたときは、深追いをやめて普通の将棋に戻すか、新鬼殺しか鬼殺し向かい飛車に切りかえます。
相手の金が6二に上がると、5三と7三の両方が守られます。さらに歩を6四に突いて桂に当て、金を6三まで進められると、先手に有効な手段はないとされています。
桂を深追いせず、普通の将棋に戻します。飛車が7八にいる形は三間飛車と同じ場所なので、そのまま飛車を左に置いて戦えます。飛車を8八へ回れば向かい飛車になります。
新鬼殺しは、米長邦雄が考えた形です。角を交換する手を先に取り込んでいるので、攻めの手を作りやすくなります。
角が8八のまま桂を7七にはねる元の形は、6四に歩を突かれると桂の足が止まります。新鬼殺しはこの弱点を消した形です。
鬼殺し向かい飛車は、島朗が考えた形です。鬼殺しの仲間の中では、相手が正しい手を指し続けても不利にならないとされています。
角を交換しない進み方になれば、ふつうの向かい飛車として指せます。
鬼殺しは玉を囲わずに攻める戦法です。
囲うとしたら、攻めが受け止められて長い将棋になったあとです。
飛車を左に振っているので右側が空きます。玉はその右側へ運びます。
鬼殺しを受けるときは、金を6二に上がるのが鉄則です(△6二金)。
6二の金は5三と7三の両方に利きます。桂が6五にはねてきても、成り込む場所がありません。角を打ち込む攻めも同時に防げます。
銀を6二に上げる受け方も知られています(△6二銀)。アマチュア向けの解説では金を上がる形がすすめられ、プロの対局では銀を上げる形が指されています。
受けの形ができたら、あとは普通に囲います。攻めを止めた時点で、玉を囲っていない相手より得をしています。
図は実戦(連戦企画の第9局)の17手目の配置です。下側が鬼殺し側(先手)、上側が相手です。
黄色の6五が、17手目に跳ねた鬼殺しの桂です。この桂が利くのは、赤い印の5三と、相手の歩がいる7三の2マスだけです。相手玉は7二にいて、7三の歩はその玉のすぐ前にあります。相手は2手目に△3四歩と角道を開けていて、鬼殺しはこの形で桂を跳ぶ戦法です。跳ぶ前に、桂の利く2マスに相手の何があるかを数えます。
図は実戦(第9局)の20手目の配置です。下側が鬼殺し側(先手)、上側が相手です。
19手目に▲7四歩と突き、20手目に△同歩と取られて、7五が空きました。そのぶん黄色の9七の角の道が8六・7五・6四とのび、赤い印の5三・4二を通って、その先の3一の銀まで届いています。赤い印の5三には黄色の6五の桂も利いていて、手前の利きは2枚です。相手でここを守っているのは5四の飛車1枚だけです。歩を突き捨てたあとは、開いた道がどこまで届いたかを数えます。
図は実戦(第9局)の21手目の配置です。下側が鬼殺し側(先手)、上側が相手です。
21手目に▲5三角成と飛びこみ、黄色の5三に馬(角が敵陣で成った駒)ができました。相手玉は8二にいます。この馬は玉のとなりの7一にいる相手の銀に利いていて、黄色の6五の桂は玉のとなりの赤い印の7三に利いています。玉のとなり8マスのうち、手前が利かせているのはこの2マスです。この第9局は下側の鬼殺し側(先手)の勝ちで終わりました(対局画面に金色の「勝利」表示・1:29:52)。
図は実戦の57手目の配置です(この将棋は鬼殺しが受け切られたあとの終盤)。下側が鬼殺し側(先手)、上側が相手です。
黄色の1五の金が、2五の相手玉に王手(次に玉を取るぞという手)をかけたところです。玉のとなり8マスを数えます。3四は相手自身の歩でふさがり、赤い印の4マス(1四・2四・2六・3六)には手前の駒が利いています。1五の金と1六の歩は玉で取れますが、どちらも取り返す駒が利いているので入れません。残るのは黄色の3五だけで、実戦も58手目に△3五玉と逃げました。
図は実戦の59手目の配置です。下側が鬼殺し側(先手)、上側が相手です。
59手目に黄色の3六へ香を打って、3五の玉にもう一度王手をかけたところです。玉のとなり8マスのうち、3四の歩と4四の馬は相手自身の駒でふさがり、赤い印の4マス(2四・2五・2六・4六)には手前の駒が利いています。3六の香は玉で取れますが取り返されます。残るのは黄色の4五だけで、実戦も60手目に△4五玉と逃げました。王手のたびに、逃げ道が何マス減ったかを数えます。
図は実戦の61手目(詰みの場面)の配置です。下側が鬼殺し側(先手)、上側が相手です。
61手目に黄色の5六へ角を打った形です。4五の玉のとなり8マスのうち、3四の歩・4四の馬・5四の歩は相手自身の駒でふさがり、赤い印の3マス(3五・5五・4六)には手前の駒が利いています。3六の香と5六の角は玉で取れますが、どちらも取り返す駒が利いています。相手の指せる手をすべて作って数えると0で、詰み(玉の逃げ場がない形)です。この将棋は下側の鬼殺し側(先手)の勝ちで終わりました(振り返り画面の棋譜欄・24:04)。
受け方を知らない相手にはよく決まりますが、知っている相手には通じません。金を6二に上がる受けが見つかってから、鬼殺しは相手が知らないことだけをねらう奇襲としてあつかわれるようになりました。
大正のころに売り出された「可章馬戦法」という本の売り文句が元とされています。「この戦法を使えば鬼も逃げ出す」という宣伝から、鬼殺しと呼ばれるようになりました。
金を6二に上がる受けです(△6二金)。この金は5三と7三の両方を守るので、6五にはねた桂の成り込む場所がなくなります。銀を6二に上げる受け方も知られていて、プロの対局ではこちらが指されています。
新鬼殺しは米長邦雄が考えた形で、角を交換する手を先に取り込んでいます。角が8八のまま桂を7七にはねる元の形は、6四に歩を突かれると足が止まりますが、新鬼殺しはその弱点を消しています。
プロの公式戦にも数えるほどの先例があります。ただしプロの主力になったことはなく、正しい受け方が広まってからはほとんど指されていません。
当サイトの定跡データは先手の手順で作っています。左右を入れかえれば後手でも同じ形にできますが、先手より1手おそくなるぶん、相手に受けの手を1手多く与えます。