公開日:2026年8月16日|最終更新:2026年8月20日
藤井システムとは、玉を初めの場所に置いたまま(居玉)四間飛車に構え、相手の囲いが完成する前に攻める定跡です。藤井猛九段が考案した戦法で、玉を高い位置に上げる天守閣美濃と、玉を隅に潜らせる居飛車穴熊の両方を相手にする形があります。将棋の藤井聡太九段とは関係のない別の戦法です。
藤井システムは、玉を囲わずに四間飛車に構え、相手の穴熊が完成する前に仕掛ける戦法です。
分類:振り飛車/定跡手数:15手(先手の手だけを数えます)
図は先手が藤井システムで仕掛けたところです。玉は5九のまま動かさず、金銀は美濃囲いの形に置き、桂を2五まで跳ねて4五の歩を突いています。盤には先手の駒だけを出しています。
藤井システムは9項目のうち破壊力と仕掛けの速さの85が並んでいちばん高く、意外性の70が続きます。いちばん低いのは覚えやすさの25、次に低いのが対急戦耐性の40です。玉を囲わずに戦うためです。
藤井システムの駒組みは15手です。定跡手数は先手の手だけ、図の「N手目」は通算の数です。黄色のマスが、その手で動いた先です。
図1 5手目
7六の歩を突き、6六の歩で角の道を止め、飛車を2八から6八へ振ります(▲6八飛)。四間飛車の形です。
図2 15手目
端の歩を1六へ突き、角を7七へ上げ、銀を3八・金を5八へ上げてから、もう1枚の銀を7八へ上げます(▲7八銀)。玉は5九のまま動かしません。
図3 21手目
4六と3六の歩を突き、桂を2九から3七へ跳ねます(▲3七桂)。これで攻めの形ができました。
図4 29手目
6筋の歩を6五へ伸ばして角の道を通し、端の歩を1五まで伸ばして桂を2五へ跳ね、4五の歩をぶつけます(▲4五歩)。ここまでで15手です。
7手目の1六歩(後手なら9四歩)が大事な一手です。端の歩を早く突いて1五まで伸ばしておくと、相手が穴熊に組んだときにその端から攻められます。終盤で自分の玉のにげ道が広くなる意味もあります。
藤井システムの狙いは、相手が穴熊を組み終える前に攻め始めることです。玉を囲う手数を攻めにまわすので、相手より早く仕掛けられます。
攻めの形は、4六と3六の歩を突いてから桂を3七へ跳ねる形です。相手が1二へ香を上げて穴熊に組もうとしたら、6五の歩を伸ばして角の道を通し、桂を2五へ跳ねて4五の歩をぶつけます。
早く突いておいた端の歩を1五まで伸ばし、桂と合わせて端を攻めます。相手が穴熊なら、その端が急所になります。
金銀は美濃囲いの形に並んでいるので、玉を4八へ上がり、3九へ引きます。さらに2八へ上がれば本美濃です。相手が早く仕掛けてきたら、囲いの堅さで戦えます。
藤井システムが対策されたときは、急戦・態度を決めない指し方・ミレニアム囲い・銀冠穴熊の4つに分けて指し方を変えます。急戦とは、軽い囲いのまま早く仕掛ける指し方です。
急戦を見せられたら、玉を4八へ上がります。居玉のまま急戦を受けるのは危ないので、端の突き越し(相手の端の歩より先まで歩を突くこと)と居玉をあきらめて美濃囲いへ移ります。
相手が態度を決めずに待ってきたら、こちらも決め打ちをしません。6七の銀と1五の歩を保留し、7八の銀と1六の歩で止めて、玉を4八へ上がり3九へ引く形にします。
角と桂で玉を守るミレニアムは、藤井システムの端攻めが届きにくい形です。端の一点狙いをやめ、4筋と6筋にも狙いをつくって数で攻めます。
銀を玉の上にかぶせてから隅へ入る銀冠穴熊に組まれると、端だけを攻めても足りません。4筋と6筋にも駒を足し、攻める場所を増やしてから仕掛けます。
藤井システムは玉を囲わずに戦う戦法です。早く仕掛けられたときは、玉を4八へ上がり、3九へ引き、2八へ上がって美濃囲いにします。
本美濃:金銀が美濃囲いの形に並んでいるので、玉を2八まで運べば本美濃になります。金が5八と4九の2枚、銀が3八にあるためです。
片美濃:早く囲いたいときは、5八へ金を上げずに玉を2八まで運びます。金1枚と銀1枚の片美濃になります。
藤井システムを受ける側は、7四の歩を突いて急戦を見せ、相手の玉を上がらせてから囲うのが代表的な対策です。
いちばん大事な受け方です。急戦を見せると相手は玉を4八へ上げるので、居玉のまま攻める形を崩せます。玉が動いてから穴熊に組みます。
どちらに進むかを決めずに駒組みを進めると、相手は端の突き越しと居玉をあきらめます。この指し方が広まって、藤井システムは見かけにくくなりました。
角と桂で玉を守る囲いです。玉を2一、角を4四、桂を3三に置きます。藤井システムが流行した時期に有力な囲いとして定着し、トーチカとも呼ばれます。
銀冠穴熊は、上からの攻めにも横からの攻めにも強い囲いです。藤井システムを警戒する指し方として指されています。
藤井システムは、相手も飛車を振る相振り飛車(おたがいに飛車を振る戦い)では成り立ちません。居飛車の囲いが完成する前に攻める戦法だからです。実際に、居飛車側が対策を見つけられず、自分から相振り飛車を選ぶ棋士が増えた時期がありました。相手が飛車を振ってきたら、玉を4八へ上がり、3九へ引き、2八へ上がって本美濃に囲い、ふつうの四間飛車として戦います。
図は、もとになった実戦の27手目、相手が角を5一へ引いた実際の配置です。実戦は後手番でしたが、藤井システムを使う側が手前(先手側の向き)になるよう180度回して示しているので、図の1筋が実戦の9筋にあたります。
黄色の5九の玉は初形から一度も動いていません。玉を初形の位置に置いたままにすることを居玉といいます。玉を囲ってから攻めるのが将棋の基本で、この戦法はその例外です。桂を跳ねたあとに玉の斜め上(小鬢=こびん)に傷ができないので、角のラインの攻めに当たりにくい、という理屈があっての居玉です。そのかわり黄色の7七の角・3七の桂・6五の歩と、攻めの形だけができています。相手の玉は3二にいて、穴熊に潜るには赤い印の2二へ寄る手が要ります。この実戦の相手は潜るのをやめ、この27手目に角を5一へ引いて別の囲いに切り替えました。相手が急戦で来そうなときは、こちらも4八玉〜3九玉、さらに2八玉と寄れば、ふつうの四間飛車と美濃囲いに戻せます。囲うかどうかは、相手が穴熊に潜れる形かどうかを見てから決めます。
図は実戦の34手目、四間飛車が6四まで走った実際の配置です。藤井システムを使う側が手前(先手側の向き)になるよう180度回してあり、図の1筋が実戦の9筋にあたります。
黄色の6四の飛車は、6八にいた四間飛車がそのまま6筋を走ったところです。ここまでの順は、まず4五・4四と歩をぶつけて黄色の4四の相手の銀を5三から引き出し、そのあと6四で歩を交換して飛車を出す、というものでした。飛車がここへ出て行けるのは、6四に利く相手の駒が1枚も残っていないからです(機械で数えて0枚。もし相手の銀が5三に残っていれば、その銀1枚が6四に利きます)。歩をぶつけて着地点を守っている駒を引き離してから飛車を通す——これが藤井システムの「成功の図」と呼ばれる形です。黄色の3二の相手の玉は、まだ穴熊に入れていません。
図は実戦の46手目、飛車が6二へ成った実際の配置です。藤井システムを使う側が手前(先手側の向き)になるよう180度回してあり、図の1筋が実戦の9筋にあたります。
黄色の6二の竜(成った飛車)は、8筋で歩と角を次々に取り合い、最後に相手が黄色の8六の飛車で取り返したあと、6八へ戻していた四間飛車が相手陣(相手側の三段目まで。玉と金と、すでに成った駒以外は、ここへ出入りするときに成れます)へ飛び込んで成ったものです。角は互いに1枚ずつ取り合って五分で、そのうえでこちらには歩が5枚たまり、竜も残りました。相手の8六の飛車のほうは、まだ成れていません。この実戦はこのあと8七へ歩を打ち、相手が飛車を7六へ回して歩を取り、黄色の7八の銀に当ててきたところに7七へも歩を打って、手堅く受けています。飛車や角を取り合う前に、取り合いが終わったあと自分に何が残るかを先に数えます。
図は実戦の54手目、2一へ角を打ち込んだ実際の配置です。藤井システムを使う側が手前(先手側の向き)になるよう180度回してあり、図の1筋が実戦の9筋にあたります。
黄色の2一の角は、黄色の3二の相手の玉に王手(次に玉を取るぞ、と迫る手)をかけています。この局面で相手に指せる手は、赤い印の3一へ寄る・2二へ寄る・2一の角を玉で取る、の3通りだけです(機械ですべて数えました)。そのどれを選んでも、次にこちらは相手の金を取れます(3一玉と2二玉には4三か4一の金、2一玉には4一の金)。黄色の6一の竜がすでに相手陣の奥にいるので、金を1枚はがせば玉を追い詰める手が続きます。この実戦はこのあと数手進んで相手が投了し、こちらの勝ちになりました。
図は別の実戦(三間飛車から地下鉄飛車に組んだ対局)の32手目の配置を、藤井システムを使う側が手前になるよう180度回してあります。図の1筋が実戦の9筋にあたります。
黄色の4八の玉のまわりを数えます。5八の金・4七の銀・3八の金の3枚が、ひとつながりになっています。ひとつながりとは、1枚取られても、となりの駒で取り返せる形のことです。この実戦では、ふつうの美濃囲い(玉を右へ寄せて銀と金で囲う形)には囲わず、玉を4八に置いたままこの形にしました。図の上側の相手は、右上のすみに玉を入れる穴熊にすでに組んでいて、囲いの堅さでは勝てないと見たからです。囲いを省くかどうかは、金と銀の3枚がひとつながりかを数えてから決めます。
図は同じ実戦(三間飛車から地下鉄飛車に組んだ対局)の38手目、飛車を1九へ回し終えた瞬間の配置を、藤井システムを使う側が手前になるよう180度回してあります。図の1筋が実戦の9筋にあたります。
黄色の1九の飛車と1八の香が、同じ1筋に縦に並びました。飛車を一番下の段を通して端まで運ぶこの形を、地下鉄飛車といいます。同じ1筋の先には、黄色の1二の相手の香と1一の相手の玉がいます。相手は玉をすみに入れて金銀4枚で囲っています(穴熊)。堅い囲いですが、玉のすぐ前にいる1二の香を取られると、玉のいる筋がそのまま開きます。図では1五に自分の歩がいるので、次は赤い印の1四へ歩を進めて、相手の1三の歩にぶつけます。端から攻めるときは、飛車と香が同じ筋に並んでいるかを先に確かめます。この対局は、このあと相手玉を詰まして、藤井システムを使った側の勝ちになりました。
違います。藤井猛九段が1990年代に考案した四間飛車の戦法です。名前が同じなので混同されますが、別のものです。
囲う手数を攻めにまわすためです。相手が穴熊を組み終える前に攻め始めるのが狙いなので、玉を動かす手を後回しにします。
玉を囲わずに戦うので、1手のミスが大きく響くことです。研究が進んだ結果、後手番の藤井システムは不利という見方になった時期もありました。
7四の歩を突いて急戦を見せ、相手の玉を上がらせてから穴熊に組む形が代表的です。ほかにミレニアム囲い、銀冠穴熊、穴熊か急戦かを最後まで決めない指し方があります。
違います。先に生まれたのは天守閣美濃を相手にする形で、そのあと居飛車穴熊を相手にする形ができました。三間飛車で使う形もあります。
おすすめしにくい戦法です。玉を囲わないので1手のミスが大きく、手順も細かいためです。まずはふつうの四間飛車で美濃囲いに組む形から覚えます。
使えません。居飛車を相手にする戦法だからです。相手が飛車を振ってきたら、玉を4八へ上がり、3九へ引き、2八へ上がって本美濃に囲い、ふつうの四間飛車として戦います。