公開日:2026年8月16日|最終更新:2026年8月20日
天守閣美濃とは、玉が8七に上がり、7八の銀・5八の金・6九の金で守る居飛車(飛車を右においたまま戦う指し方)の囲い(玉を守る駒の形)である。初形から10手、舟囲い(玉を7八に置く居飛車の基本の囲い)から4手で組める。玉が自分の角の1つ上に立つので、相手の角がねらう斜めの線から外れる。
天守閣美濃は、玉を守る駒の形が10手で完成する居飛車の囲いです。系統は居飛車その他、陣営は居飛車です。
天守閣美濃の完成図(先手・10手)
陣営:居飛車/系統:居飛車その他/組む手数:10手
手数の数え方は、この盤面図に写っている形を作るのに必要な手だけです。飛車先(飛車の前の筋)を伸ばす手や、盤面図に写らない通り道をあける手は数えていません。
天守閣美濃は横の耐久力75と進展性80が高く、上部の耐久力45が低い囲いです。守りの力を9つの項目で表すと次のようになります(100点満点)。
| 項目 | 点数 |
|---|---|
| 横の耐久力 | 75 |
| 斜めの耐久力 | 65 |
| 上部の耐久力 | 45 |
| 端の耐久力 | 50 |
| 玉の広さ | 55 |
| 玉の遠さ | 60 |
| 囲いやすさ | 65 |
| 陣形バランス | 65 |
| 進展性 | 80 |
左美濃と比べると横の耐久力は65から75へ上がりますが、上部の耐久力は50から45へ下がります。玉が1段上がったぶん、横に強く上に弱い形です。
90〜100=全囲いでトップクラス/70〜89=強い/50〜69=ふつう/30〜49=弱め/0〜29=はっきりした弱点。
天守閣美濃の組み方は初形から10手です。はじめの6手で作る形は舟囲いとまったく同じで、そこから4手かけて玉を8七へ運びます。
初形 はじめの形です。玉は5九にいます。
3手目 角の道をあけ、玉を5九から6八へ上げ、7八へ寄せます(▲7六歩・▲6八玉・▲7八玉)。
6手目 5筋の歩を突き、3九の銀を4八へ上げ、4九の金を5八へ上げます。ここまでが舟囲いです(▲5六歩・▲4八銀・▲5八金右)。
8手目 9筋と8筋の歩を突きます(▲9六歩・▲8六歩)。
10手目 玉を8七へ上げ、7九の銀を7八へ上げて天守閣美濃の完成です(▲8七玉・▲7八銀)。
まとめると、舟囲いを6手で作り、9筋と8筋の歩を突いて玉を8七へ上げ、7九の銀を7八へ上げる10手です。9六の歩は省けません。9七に歩がいる形のまま玉を8七へ上がると、9五に桂を打たれて王手がかかり、その桂を取る駒がありません。
天守閣美濃は、おもに自分が居飛車・相手が振り飛車(飛車を左へ動かす指し方)のときに使う囲いです。向き不向きは、自分と相手の戦型の組み合わせで決まります。
天守閣美濃は、玉の頭を早く攻められたら8七へ上がるのをやめ、舟囲いや左美濃で戦います。
天守閣美濃の急所は、玉の頭の歩(8六)・端の空きマス(9五)・7五の空きマスの3つです。赤い印の場所が狙われます。
崩す側の攻め方は2つです。8六の歩に歩を足して玉の頭をこじあける攻め方と、9六か7六の歩を取ってから桂を打つ攻め方です。8七の玉の逃げ道は9七・9八・7七の3マスだけです。どれも玉より下か横なので、上から攻められたら下がって受けるしかありません。
図は実戦(プロ棋士が天守閣美濃と四枚美濃の組み方を教えます)の23手目の配置です。
黄色の4つが天守閣美濃の骨格です。8六の歩を突いてから玉を8七へ上げ、7九の銀を7八へ上げます。6九の金は舟囲いのときの位置のままです。この形は8八の角の道が通ったままなので、囲いながら攻めの手も残せます。もとになった実戦でも、相手が四間飛車に構えたのを見てからこの形を選び、23手目で組み上がっています。
図は同じ実戦の37手目の配置です。
黄色の4枚(7七の銀・7八の銀・6七の金・6九の金)が四枚美濃です。天守閣美濃から、右の銀を7七へ運び、6七の歩を6六へ進めて、空いた6七へ5八の金を上げると、この形になります。この形にすると角は7九まで引くことになり、8八から斜めに通っていた道はいったん止まります。そのぶん玉のまわりが厚くなるので、持ち時間に余裕があって長い戦いになりそうなときの選び方です。
図は同じ実戦の37手目の配置を、玉の頭が見えるところまで広げたものです。
赤い印の8五と8四は、いま空いています。黄色の8六の歩を支えているのは黄色の8七の玉と7七の銀の2枚だけです。相手に8四の歩を突かれて8五まで来られると、歩がぶつかって玉の頭が直接あたります。この実戦では相手が端(1筋)へ手を出したため玉頭は無事でしたが、解説では「8四歩と1つ突くべきだった」と振り返っています。
図はもう1本の実戦(なぜ王様が三段目にいく「天守閣美濃」が強すぎるのか?)の31手目の配置を、天守閣美濃側が手前になるよう反転したものです。
黄色の3四の飛車と3五の歩が石田流(飛車を自陣から四段目まで浮いて使う振り飛車の形)です。この形に対して、黄色の4六の銀は黄色の3五の歩に当たっています。もとになった実戦では、この銀を出しておいたおかげで3筋で歩を1枚交換でき、持ち駒の歩が0枚から1枚になりました。歩が1枚あると、この形では相手の飛車がいる3筋へ歩を打ちこんで飛車をねらう手が生まれます。図の相手の5三の角は、こちらが7九へ角を引く手を先に消した一手です。じっくり固めたいときは、この銀を6六から7七へ回して四枚美濃にする指し方もあります。この実戦も天守閣美濃側の勝ち(相手の投了)でした。
図は1本目の実戦の投了の場面(89手目)の配置です。
黄色の6八のと金(成った歩)は、7八へ寄って金をねらう形です。ですが黄色の8七の玉は三段目にいるので、と金が7八まで来ても王手にはなりません(と金は金と同じ動きで、斜め後ろへ動けないため8七には利きません)。相手の攻めが王手にならないぶん、こちらは受けずに攻め続けられます。この実戦は、この局面で相手が投了し、天守閣美濃側の勝ちになりました。
天守閣美濃の発展元は舟囲いで、そこから4手で組めます。同じ左美濃の仲間である左美濃・居飛車銀冠もあわせて挙げます。かっこの中は、初形から組む手数です。
天守閣美濃と相性の良い戦法は、四間飛車(飛車を4筋へ動かす振り飛車)を相手にする持久戦(長い戦いにする指し方)と棒銀(銀を前に出して飛車の前を攻める戦法)の2つです。
どちらも相手が振り飛車のときに使います。玉が相手の角のねらう斜めの線から外れるので、玉を囲いきるまで狙われにくい形です。
天守閣美濃は10手で組め、玉の頭の8六が急所で、天敵は藤井システムです。くわしくは次のとおりです。
10手です。はじめの6手で作る形は舟囲いと同じで、そこから9筋と8筋の歩を突き、玉を8七へ上げ、7九の銀を7八へ上げます。
玉が8七という高い位置に立つ形を、城の天守閣に見立てた名前です。
玉の頭です。8六の歩を守っているのは8七の玉1枚だけなので、ここに歩を足されて拠点(相手の駒が居すわる足がかり)を作られると玉が直接あたります。
藤井システム(相手が玉を囲わずに端と玉の頭へ攻めをそろえる戦法)です。天守閣美濃は玉の頭の守りが薄い(守り駒が少ない)ので、囲いきる前に攻めをそろえられると受けが間に合いません。
突かないといけません。9七に歩がいる形のまま玉を8七へ上がると、9五に桂を打たれて王手がかかり、その桂を取る駒がありません。9六に歩があれば9五で取れます。
玉と角の位置がちがいます。左美濃は玉が8八で角を7七へ動かし、天守閣美濃は玉が8七で角は8八に残ります。天守閣美濃のほうが横の攻めに強く、上からの攻めに弱くなります。
玉の頭か端をねらいます。8六の歩に歩を足して玉の頭をこじあけるか、9六か7六の歩を取ってから桂を打って王手をかけます。